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日本からなぜ、世界長者番付のトップ10に入るような大富豪が生まれないのか。花まる学習会代表の高濱正伸氏は、世界との「教育」の違いから、その理由を説明する。だが、そこには明るい兆しも見えてきたという──。

“変わり者”を育てる教育ではない

日本の教育は横並び主義。これはみなさんも知っている揺るぎない事実です。いかに出過ぎず空気を読めるか。レールから外れないことに重きを置いています。

一方、世界は真逆です。個性を尊重し、「出る杭は出したままにする」教育を行っている。だからこそ、「変わり者」が生まれ、次々とイノベーションが起きているのです。

そういう意味では、孫正義さんが日本人でトップになったのは納得です。「週刊ダイヤモンド」2017年4月22日号では「孫家の教え」という特集を組んでいましたが、そのなかで孫さんの父親は「学校の先生の言うことは信用するな」と言っています。もともと学校教育を信用していなかったんです。

孫さんは坂本龍馬の脱藩に憧れ、アメリカの高校、大学へと進みました。海外の教育環境に身を置いたからこそ、あの強烈なキャラが殺されず、現在の成功を収めることができたんだと思います。

日本の教育は一定レベルの人材を生み出すことに長けていますが、イノベーションを起こす「変わり者」を生み出すためのものではない。その違いが、結果的に日本の存在感を薄めているのです。

変化の兆しを見せている、日本の教育

ただし、この数年の間で日本の教育は劇的に変わる可能性があります。例えば、「N高等学校」「T-KIDSシェアスクール」はいずれもユニークな挑戦です。

前者は、カドカワが2016年に立ち上げた、インターネットで双方向の授業を受けられる単位制、通信制の高等学校です。「IT×グローバル社会を生き抜く人材の育成」というコンセプトのもと、必履修科目を学びつつ、プログラミング、文芸、ゲーム、アニメ、ファッション、美容など各業界のプロの授業を受けられる仕組みになっています。

生徒はプログラマーやクリエイターを目指す人が中心となっていますが、それだけでなく、引きこもりや不登校などで横並び教育に馴染めなかった人も対象に「教育の場」を提供しているのも良い動きだと思いますね。

後者は、カルチュア・コンビニエンス・クラブとスタートアップ育成を手がけるMistletoe(ミスルトウ)が2017年に共同で立ち上げた学校。デジタルネイティブ世代の子どもたちを対象に、最先端の学びを提供。プログラミング、探求学習、文化芸術、フィジカルなどのジャンルを中心に、さまざまな授業が用意されています。また、「21世紀型教育」を謳っており、年齢や生活スタイルに合わせてカリキュラムが組めるようになっているのも面白いと思います。

そのほか、DMM.comの亀山敬司取締役会長が立ち上げた高卒者向け教育機関「DMMアカデミー」にも注目しています。これは前述の2つとは立ち位置が異なり、ビジネスにおける若手人材育成を目的とした教育機関ですが、内容がとてもユニークです。2年間の契約社員として、月額30万円の給料をもらいながら、社内実務研修、プログラミング研修、マネジメント研修などが学べるのです。

日本は教育システムが問題視されがちですが、教育のレベルは他国と比べて決して低くありません。むしろ、数理思考力は世界トップレベルにあるといっていいでしょう。

だからこそ自身で事業を立ち上げ、会社を経営してきた人たちが教育業界に参入してくることで、教育機関全体が活性化されることを期待しています。業界外の人がやってくれば、必ず化学反応が起きます。横並び主義だった日本の教育システムが変わる日も、そう遠くないでしょう。

[特集]日本長者番付 2017年最新リスト

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高濱正伸◎1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。 1993年、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、学習塾「花まる学習会」を設立。 『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』、『小3までに育てたい算数脳』など、著書多数。【関連:子供を成功させたい親がやるべき、たったひとつのこと

構成=新國翔大

 

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