東京マラソン2017 (Photo by David Mareuil/Anadolu Agency/Getty Images)

日本人の死因のうち、16%は運動不足が影響─。医学雑誌「LANCET」の指摘である。ITで生活がラクになった現代において、運動不足を解消するよい方法とは。

今年の2月、筆者は東京マラソンを4時間27分で完走した。55歳にして自己ベストを大幅に更新できた。何歳になっても新しいことに挑戦し続けられる喜びをあらためて実感している。

少年時代より剣道に打ち込んでいたが、大学卒業後は竹刀を握れないまま月日は流れた。ハーバードに留学した際、ボスはボストンマラソンのランナーだった。早朝ランニングをして6時半には病院で仕事を始めるボスの背中を見ながら、私は「道を究める人がどういうライフスタイルをしているのか」を目撃した。

ボスは10年後に多発性骨髄腫に対する画期的な治療を開発し、米国がん学会で最も栄誉ある賞を受け、現在は米国血液学会の会長である。

2007年、東京マラソンが始まったとき、ボスのランニング姿が目に浮かんだ。人生で10km以上走ったことがなかったのに、早速第2回大会に申し込んだ。そういうときに限って当選して参加できてしまうから不思議なものである。しかし、少しずつ練習を開始したものの、大会2カ月前に太もものハムを痛め、十分な走り込みをできないまま本番を迎えた。

25kmあたりで足がつり、あとは歩いたので5時間半もかかった。だが、人生であんなに大勢の人から応援されたことはない。また、ゴールにたどり着いたときの達成感は何物にも替え難く、「なせば成る」という自信につながった。

その後はランニングの虜とりこになってしまい、時間をつくって皇居ランをしている。四季折々の空と風、木々の風に揺れる音、色鮮やかな花々、夕焼けを映す雲の色、老若男女のランナーたち。駆け抜けるうちにストレスから解放され、リフレッシュした自分に気付く。

私はボスの影響で自称ランナーになった。逆に私も多くの人に影響を与え、そのなかの何人かはランナーになった。患者さんにも運動の効用を説いている。肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病、不眠症、うつなど適応は多い。

小児科でも、しょっちゅう風邪をひいて熱を出す、落ち着きがない、ぜんそく気味の子どもの親御さんには、「外でたくさん遊ばせてください。自然に触れる時間をもっとつくってあげてください」と指導する。その結果、大人も子供も薬に頼らずとも目に見えて健康になっていく。

「ニューイングランド・ジャーナル」の総説は「現代医療は早世のわずか10%しか防いでいない。一方、その40%はライフスタイルを変えることによって防げる」と指摘している。日本人にいたっては死因の16%が運動不足の影響という。世界平均が9%であることを考えると、かなり高い。パソコンの前に座りっぱなしが体によくないとわかっていても、なかなか行動に移せないようだ。

ハーバードの医師らは「医師が自ら手本になることにより、患者のライフスタイルを変えられる」と主張。私は「医師自らアクティブに生きることが、患者さんのライフスタイルを変える」と確信している。

うらしま・みつよし◎1962年、安城市生まれ。東京慈恵会医大卒。小児科医として骨髄移植を中心とした小児がん医療に献身。その後、ハーバード大学公衆衛生大学院にて予防医学を学び、実践中。

文=Forbes JAPAN編集部

 

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